2012年2月アーカイブ

アラビア語の定冠詞(5)

 「هناك كثير من الناس الذين يذهبون إلى السوق」という文章は、「市場へ行く大勢の人がいる」という意味で、英語で言えば、「There is (are).... 」構文の文章ですが、こういう構文で、「كثير」に定冠詞が付いている文章も時々見られます。 
 上例に従えば、「هناك الكثير من الناس الذين يذهبون إلى السوق」のような文章のことです。

 さて、この定冠詞のある・なしで両者の文章にどのような意味の違いがあるのでしょうか?

 アラブ人に確認したところ、数や程度を示す形容詞に定冠詞をつけて限定にすると、形容詞「كثير」であれば、「多くの」が強調されて、「より多くの」、「更に多くの」の意味になるそうです。感覚的には非限定が100人くらいであれば、限定は130人くらいだとか。右の数字は感覚的なもので人により捉え方は若干違うのかもしれませんが、いずれにせよ、定冠詞の用法として(数量・程度等の)「強調」というのもあるようです。

アラビア語の定冠詞(4)

 「アラビア語の定冠詞(2)」で、「アラビア語で一般の事象を表現する際に、主語が人間や動物の際には、それらを複数形にするのが普通。物の場合には単数形でも複数形でもどちらでもいいが、単数形の場合が多い」と書きましたが、このルールに当てはまらないものもあるようです。

 例えば、「雨の日は彼は家から出ない」という文章のアラビア語は、  「لا يخرج من البيت في الأيام الممطرة 」となります。

 「雨の日は」の「في الأيام الممطرة 」を単数で「في اليوم الممطر 」とすると、「その雨の日に」という意味になり、「雨の日に(when it rains)」とは理解されにくいようです。

 車、テレビ、時計、パソコン、電話、財布のような物質名詞とは違う日、月、年などを表す名詞(こういう名詞は何と呼ぶのでしょうか?)では、複数形にしないと一般性を表せないようです。その辺りについてアラブ人に聞いてみましたが、うまく説明できないようで、ケーズバイケースで覚えていくしかないと苦し紛れに言っていました。定冠詞による一般性(単数・複数別)については、もう少し調べてみたいと思います。

 因みに、上記文章の「في」 以下の名詞句を非限定の単数形とすれば、「لم يخرج من البيت في يوم ممطر 」の文章は、「ある雨の日に彼は家から出なかった」という意味になり、「في يوم ممطر 」は、
في يوم من الأيام الممطرة 」の意味で、ある特定の雨の日を意味します。

عباية

 時々、基本単語が辞書に登録されてなくて驚くことがありますが、今日は、アバーヤ(日本語ウィキペディアではアバヤと記されていますが、アラビア語の発音をよりに忠実にカタカナにすれば、アバーヤになる)が登録されていないことに気づきました。サウジアラビアにいながらこんなことではいけません。以下の単語も含め登録しておきました。

 同様の単語に「عباءة」がありますが、「عباية」は、「عباءة」から派生した語であると聞いたことがあります。「عباءة」は男女が着用する打ち掛け風の外套のことですが、この語はどちらかというと男性用の打ち掛けに使われ、それは「بشت」(ビシュト)とも呼ばれます。
 「عباية」は全身を覆う黒くて長い民族衣装で、女性だけが着用するものです。

アラビア語の定冠詞(3)

 「アラビア語の定冠詞(1)」と「アラビア語の定冠詞(2)」では、一般的な事象を述べる際には、定冠詞が必要となることを説明しました。
 その他に、アラビア語で定冠詞が付される場合として抽象名詞を
挙げている文法書があります。抽象名詞とは、性質・状態・動作など無形のものや、抽象的な概念などを表す名詞のことで、例えば、親切、正直、勇気、健康、平和というような語が当てはまります。

 英語で書かれたアラビア語の文法書の中には、(英語の抽象名詞には定冠詞が付かないこととの対比において)「アラビア語の抽象名詞には定冠詞が付く」を、アラビア語で定冠詞を付ける場合の規則の一つであると説明しているものがあります。例を挙げると、

(1)愛は盲目(Love is Blind
 
الحب أعمى

(2)必要は発明の母(Necessity is the mother of invention
 
الحاجة أم الاختراع

があります。英語との比較を離れて、アラブの諺からは、

(3)醜
さは女の番人
القبح حارس المرأة

等が挙げられます。

「AはBである」というアラビア語の文章では、主語のAでは、定冠詞を付ける等して限定扱いにしないと文書として成り立たないのはご存じの通りです。従って、一部の文法書が言う「抽象名詞には定冠詞を付ける」という規則は、英語との比較に置いて付ける必要があると言っているに過ぎなく、抽象名詞に限らず、「AはBである」というアラビア語の文章では、主語のAは限定にする必要があるということです。

 なお、「くわしいアラビア語」(内記良一著、大学書林)では、「AはBである」という構文において、
「限定+非限定」(上記の(1))
「限定+限定」(上記(2)及び(3))
「非限定+非限定」(例文として、إنسان خير من بهيمة 等が挙げられている)
の3パターンがあるとしています。
 「非限定+非限定」 のパターンについては、我々日本人がアラビア語の文章を作る際にはそのような構文を真似る必要はなく、そういうパターンもあり得ると理解しておくことで十分だと思います。詳しくは同書の第12章を一読下さい。

アラビア語の定冠詞(2)

 アラビア語の定冠詞については、ずいぶん昔のことですが(なんと2001年)話題に出したことがあり、それ以来のようなので、第2回目ということにしておきます。「アラビア語の定冠詞(1)」はここを見て下さい。

 今回の話も基本的には、そのずいぶん前とほぼ同様の話ではありますが、英語の冠詞の用法との比較も含めておきたいと思います。

 一般的な事柄を述べる場合、それは「猿のおしりは赤い」とか「パンダは大人にも人気がある動物である」のような文章についてですが、英語の場合には、概ね以下のように言われています。
例えば、「キリンの首は長い」の訳として、
(1)Giraffs have long necks.
(2)A giraffe has a long neck.
(3)The girafffe has a long neck.
が考えられ、(1)が一般的な表現、(2)は(1)程ではないが一般的な表現、(3)は学術論文等で使われような硬い表現で、あまり一般的ではない表現。更に(3)は、もう一つの意味があり、一般的な事柄を述べるのではなく、「そのキリンの首は長い」という意味もあり得る。

 さて、これをアラビア語で考えてみましょう。
 「子供はミルクが好きだ」という一般的な事柄を述べる場合の訳としてアラビア語で表現できるのは、「يحب الأطفال الحليب」しかありません(勿論、名詞文にすることは可)。
 定冠詞と不定冠詞がある英語とは違い、アラビア語の場合には定冠詞しかないので、冠詞に関して言えば、アラビア語の方が扱いが簡単と言えるかもしれません。
 「يحب الأطفال الحليب」には、「子供はミルクが好きだ」という意味の他に、「その子供達はミルクが好きだ」の意味や「その子供達はそのミルクが好きだ」という意味もあります。それらは、文脈から判断するしかありません。

 なお、アラビア語で一般の事象を表現する際に、主語が人間や動物の際には、それらを複数形にするのが普通です。ところが物の場合には単数形でも複数形でもどちらでもいいようですが、単数形の場合が多いようです。そのことは「アラビア語の定冠詞(1)」のコンピューターの例で触れておきましたが、他の例でもう少し説明しますと、例えば車やテレビの説明書(マニュアル)で、主語の車やテレビの「ギアを変える」とか「スイッチを押す」などと説明する場合、車やテレビを複数形にする必要はなく、(定冠詞付きの)単数形で事足りるということです。

إعلامي

 アラビア語の文章を読んでいると、理解しているように思っていても、実は結構いい加減にしか理解していないことがよくあります。それは、自分の場合には、個々の単語の意味をきちんと把握出来ていないことから来るように思います。
 
 「إعلامي」という単語が出てきて、このアラビア語-日本語電子辞書では「新聞記者」や「プレス関係者」という訳語を入れていましたが、どうもそれではピンと来ないので、アラブ人に聞いてもう一度訳語をまとめ直しました。その結果は次の通りです。
【形】1.通報する、通知する、通告する、2.情報の、3.報道関係の、報道機関の、プレスの、マスコミの
【名】[m](新聞記者、特派員、レポーター、アナウンサー等の)報道関係者、プレス関係者、マスコミ関係者
 
 この中で、形容詞の「情報の」というのは諜報は含まれず、一般的な公開情報という意味です。名詞の「報道関係者」は新聞記者に限定されず、訳語の通り、レポーターやアナウンサー等も含まれるようです。

アラビア語の発音

 サウジアラビア人と話をしていたら、「ある場所で、日本人がアラビア語のスピーチを行う機会があり、それを聞いていたら、「معاملة」の発音が「مؤامرة」に聞こえ、どきっとした」とのことで、こういう場合、「معاملة」の代わりに「تعامل」 とでもしておけば、発音もしやすく、誤解を生む可能性は減るのでは」とのアドバイスがありました。

 なるほどと思うと同時に、「ع」や「ر」も含めて気をつけて発音しないと、アラビア語を母国語とする人には通じないことがあると、改めて痛感しました。

一太郎

 ワープロソフト「一太郎」の最新版、正確には「日本語ワープロソフト一太郎2012承」が先日リリースされたので、ダウンロード販売のバージョンアップ版を購入しました。

 一太郎は、MS-DOSの頃から概ねバージョンアップが発売されると購入して来ました。それほど使うソフトではないのに、これほどジャストシステムに貢いだのは、自分の両親が徳島出身であり、幼少の頃から毎年夏に徳島へ連れて行ってもらったので、どっぷりと馴染み、ひいきになっているところがあります。馴染みすぎて、出てくるおかず類には何にでも「すだち」を絞りたくなるという徳島人特有の血を受け継いでいるようです。アンジェラアキの徳島弁を聞くと、なんともほっとするところがあります。
 
 そういえば、ジャストシステムの代表的製品である日本語入力システムの「ATOK」は、「Advanced Technology of Kana-kanji Transfer」が正式名称らしいですが、「阿波徳島漢字変換」とよく言われていたものです。

 さて、一太郎については、もうかれこれ20年近くもがっかりさせられてきているのは、多言語対応がほとんどなされてないということです。今回の最新版の一太郎上でもアラビア語入力を試してみましたが、使いものにならない状況に変わりはありません。一太郎ではアラビア語の入力は出来ません(単語レベルで日本語の文章にアラビア語をちょこっと入れ込む位なら出来そうですが)。

 一時、多言語に対応した「一太郎Ark」という製品が売り出されたことがありますが、
http://www.justsystems.com/jp/software/dt/ark/
 右から左へ書かれる言語についてはきちんと対応していないという話を聞いたことがあります。アラビア語対応かどうかの詳細は分かりませんが、もう製造されていない製品であることは確かです。

 ということで、一太郎に多言語を求めることは出来ないと諦めていましたが、ジャストシステムが法人向けにMS Office互換のオフィス統合環境ソフトを発売するとのニュースがあり、
 ワープロについては「MS-Word」と互換性があると書いてあるということは、多言語機能でアラビア語も使えると思いますが、どうでしょうか?
 それが出来るのであれば、一太郎でも実装してくれてもよさそうに思いますが、多言語において20年間何も進歩がない閉鎖性を考えると、無理な話のように思います。
 そんな淡い期待は持たずに、さっさとMS製品を使って、日本語もアラビア語も自在に使う方が手っ取り早いということです。

眠る・寝る

 仮眠やうたた寝の意味の単語としてسنة というのがあるのを知った機会に、一度この眠るとか寝るという意味のアラビア語をまとめてみました。
(1)نام :一般的に眠る、寝るという意味です。
(2)رقد :病気等で疲れて寝る、休む、休息する、横になるの意味で、結局は眠ることになるのかもしれません。
(3)قال :動詞よりも動名詞のقيلولة の方がよく使われますが、意味としては昼寝、午睡です。
(4)غفى :仮眠する、うたた寝する、居眠りする、うとうとするという意味です。名詞はغفوة で名詞の方がよく使われます。
(5)سبت :動名詞はسبات で、深い眠り、休眠、更には昏睡を意味します。
(6)وسن :動名詞はسنة でコーランで仮眠としての意味で出てくるようですが、一般的な単語でなく特に動詞が使われることはまずないようです。

久しぶりの人前での演奏

 本日は、ジッダ日本人会のカラオケ大会(カラオケに限らずいかなるパフォーマンスも可)があり、吉俣良の「良し」(NHK大河ドラマ「篤姫」のBGMでよく使われていた曲)を、ピアノ(自分)とキーボード(妻)で演奏しました。

 「良し」については、ピアノとバイオリンの合奏バージョンがあり、今回はそのバージョンを基に演奏しました。


 この曲を練習し始めた頃から、改めて考えてみると、クラシックの曲を除いて、主旋律を奏でるピアノ曲を弾いた経験がほとんどなく(すなわち、これまでの人前での演奏は伴奏系がほとんど)、主旋律を弾くのはちょっとしたミスも非常に目立つので、そのことがずっと気になっていましたが、演奏の結果はそれが的中し、かなりミスが出てしまい、満足のいく演奏ではなかったです。

 言い訳がましいですが、本番の今日になって、耳コピで採譜した楽譜に誤りがあることが分かったり、「良し」のピアノの左手のレンジがかなり広く、右手で取ると楽に演奏できる箇所を左手のままにするか右手に変えるかで悩んだりしたことが悪かったようです。

 演奏当日になって、音を変えたり、指使いを変えたりするのは、鬼門であることが身にしみて分かった次第です。

ハンドボール第15回男子アジア選手権

 2013年男子世界選手権アジア予選を兼ねたハンドボールの第15回男子アジア選手権がジッダで行われていました。
http://www.ahb2012.org/index.php?lang=ar

 一昨日の3日には 日本対カタール戦があり、応援に行ってきました。
 カタールに勝てば2位に浮上する可能性もありましたが、日本は負けてしまいました。 
http://www.aljazeerasport.net/news/others/2012/02/201223194456421616.html

 本日(5日)の最終日は、日本はサウジアラビアと対戦(3位決定戦)しましたが、惜しくも敗れてしまいました。
 これにより、残念ながら日本は世界選手権の出場権を失い、1位の韓国、2位のカタールに加え、3位となったサウジアラビアの上位3ヶ国が出場権を手に入れたということになります。

مرتاد

 今日のサウジアラビアのアラビア語紙に、
مرتادو المطاعم يتخوفون من دمج الرسوم الملغاة في الأسعار と題する記事があり、最初のمرتاد が人物名詞の複数形になっていて、(毎度悪者扱いのように出てきますが)HANS WEHAの辞書では意味が取れないので、調べてみたら、المورد の辞書で常連客を意味すると出ていました。
 مرتاد は既登録語ですが、常連客の意味が入っていなかったので、入れておきました。更には、ملغى (女性形:ملغاة)も未入力でしたので、入力しておきました。
 因みに、この表題の意味は、「レストラン通いをする者達は、廃止された料金(記事内容からサービス料)が勘定に含まれることを懸念している」という意味です。

HANS WEHRの辞書(第5版)

 THE HANS WEHR DICTIONARY OF MODERN WRITTEN ARABIC Edited by JM.COWAN (5th Edition) の発行予定について、一昨日、発行元の「Spoken Language Services, Inc」へメールで問い合わせてみたところ、「製作過程にあるが、現時点では、発行日の目処はない」との回答がありました。
 ネット上ではドイツ語版の第5版は良い評価を得ているので英語版についても期待されるところですが、翻訳に時間がかかりすぎているように思います。
 いつまでかは分かりませんが、待つということかと思います。

節分

 今日は日本では節分ですが、Google(Arabic)で「سيتسوبون 」を検索すると、トップにウィキペディアのアラビア語版による節分の説明が出てきます。

http://ar.wikipedia.org/wiki/%D8%B3%D9%8A%D8%AA%D8%B3%D9%88%D8%A8%D9%88%D9%86

 Google(Arabic)の検索で、「سيتسوبون 」というあまり使われることのない言葉がウィキペディアで説明されていることを知り、また、「سيتسوبون」が1300以上のウェブサイトで言及されているのはちょっと驚きでしたが、豆をまいて鬼を追い払うというしきたりが、日本で住んだり日本語を学ぶアラブ人にはかなり興味深いのかもしれません。

HANS WEHRの辞書

 THE HANS WEHR  DICTIONARY OF MODERN WRITTEN ARABIC Edited by JM.COWAN については、昔、ある大学の先生から、「米国にまともなアラビア語-英語辞書がないのは諜報、情報収集活動に支障を来すということで、かねてから評価が高かったHANS WEHR編纂のアラビア語-ドイツ語辞書を、CIAがアラビア語-英語辞書に翻訳させることにした経緯がある」と聞いたことがあります。

 この話の真偽は不明ですが、発行元の「Spoken Language Services, Inc」のサイト見ると、CIAから委託を受けて細々とドイツ語版の英語化をやっているような気がすると勝手に思ったりしていますが、どうでしょうか?
http://www.spokenlanguage.com/

 アラビア語-ドイツ語版は第5版がずいぶん前に発刊されているのに、アラビア語-英語版は相変わらず第4版のまま止まっています。第4版が発刊されたのは1994年のようですから、もう20年近く改訂されていないことになります。20年近く改訂がない辞書というのも、如何なものかと思います。第5版は発刊されると信じていますが、もしかすると、もうそんな予定はないのでしょうか?

تشبيك

 雑誌を読んでいたら、تشبيك という単語に2回出くわし、HANS WEHAの辞書では意味が取れないので調べてみたら、「ネットワーク」を意味するIT関連の専門語のようです。
 訳語としては、「1.(コンピューター)ネットワーク、網状組織、(ネット上で情報交換、人脈形成等を行う個々人のつながり)グループ、2.(コンピューター)ネットワークの構築」辺りで登録しておきます。複数形は تشبيكات です。