アラビア語の定冠詞(3)

 「アラビア語の定冠詞(1)」と「アラビア語の定冠詞(2)」では、一般的な事象を述べる際には、定冠詞が必要となることを説明しました。
 その他に、アラビア語で定冠詞が付される場合として抽象名詞を
挙げている文法書があります。抽象名詞とは、性質・状態・動作など無形のものや、抽象的な概念などを表す名詞のことで、例えば、親切、正直、勇気、健康、平和というような語が当てはまります。

 英語で書かれたアラビア語の文法書の中には、(英語の抽象名詞には定冠詞が付かないこととの対比において)「アラビア語の抽象名詞には定冠詞が付く」を、アラビア語で定冠詞を付ける場合の規則の一つであると説明しているものがあります。例を挙げると、

(1)愛は盲目(Love is Blind
 
الحب أعمى

(2)必要は発明の母(Necessity is the mother of invention
 
الحاجة أم الاختراع

があります。英語との比較を離れて、アラブの諺からは、

(3)醜
さは女の番人
القبح حارس المرأة

等が挙げられます。

「AはBである」というアラビア語の文章では、主語のAでは、定冠詞を付ける等して限定扱いにしないと文書として成り立たないのはご存じの通りです。従って、一部の文法書が言う「抽象名詞には定冠詞を付ける」という規則は、英語との比較に置いて付ける必要があると言っているに過ぎなく、抽象名詞に限らず、「AはBである」というアラビア語の文章では、主語のAは限定にする必要があるということです。

 なお、「くわしいアラビア語」(内記良一著、大学書林)では、「AはBである」という構文において、
「限定+非限定」(上記の(1))
「限定+限定」(上記(2)及び(3))
「非限定+非限定」(例文として、إنسان خير من بهيمة 等が挙げられている)
の3パターンがあるとしています。
 「非限定+非限定」 のパターンについては、我々日本人がアラビア語の文章を作る際にはそのような構文を真似る必要はなく、そういうパターンもあり得ると理解しておくことで十分だと思います。詳しくは同書の第12章を一読下さい。