表題は、アルジャージーラ紙で掲載されたある記事のタイトルです。

因みに、米国とバーレーンの協定というのは、9月13日に両国間で締結された安全保障と経済面での新協定のことです。

さて、この表題の「أبعاد」と「دلالات」をどう訳すのが適当かということで、これら2語についてのより適切な日本語訳を改めて中級辞書でまとめ直しました。

表題については、「米国・バーレーン協定の様々な側面とその意味合い」という訳ですっきりするのではないかと思います。

أبعاد」は「(事件や出来事の政治的、経済的、社会的等の)側面、様相、様態」という意味で、「特色」とか「特質」と訳してもいいのではないかと思います。

他方では、دلالات」については、単数形で「指示」や「兆候」以外に「意味」という意味がありますが(「重要性」と訳してもいいと思います)、複数形については、「含み、含蓄、含意、意味合い、意味するところ」という訳を入れておきました。

中級辞書Ver.6.44のアップロード

-アラビア語-日本語電子辞書データ更新報告-

辞書名:中級辞書Ver.6.44

登録語彙数:64,400

辞書の説明:(Ver.6.42から)新規に200語の追加、約30語の既登録語の訂正の実施。

特記事項:特になし。

بعد الغد

再び「غد」を使った表現の話になります。この件もアラビア語を母国語とする人に確認しました。

例えば、今日が月曜日で明後日が水曜日だと分かっている場合に使う(この例では水曜日を指す)のが、「بعد الغد」となります。日本語では「明後日」という意味です。

前回と同じ説明になりますが、「غد」に定冠詞がつかない場合は、いつの「غد」であるのかはっきりしません。
従って「بعد غد」は「明日以降」の意味になり、「明日以降のいつかの日において」ということになります。

辞書によっては、「بعد الغد」も「بعد غد」も「明後日」(the day after tomorrow)と訳していますが、それは正確ではないように思います。

ということで、「明後日」を表すには「بعد الغد」が使われます。

صباح الغد

صباح الغد」という表現についてですが、「صباح غد」という表現もあるので、それらの違いなどを含め、アラビア語を母国語とする人に照会した結果を記しておきたいと思います。
(ここでは、「صباح」を対格にして、副詞的な意味として扱います。)

صباح الغد」は、間違いなく「明日の朝」や「明朝」の意味になります。それ以外の意味はありません。

他方で、「صباح غد」は、「明日の朝」や「明朝」の意味も可能となりますが、「غد」に定冠詞がないので、明日がいつの明日なのかはっきりしないということで、必ずしも明日の朝ではなく、数日後や一週間後の朝という意味と理解することが可能であるとのことでした。
こういう説明はピンとこないところがありますが、「غد」の複数形は「أغداء」(但し、複数形が使われることは希だと思います)なので、
صباح غد」は「صباح غد من الأغداء」と理解しておけば、「いくつかある明日の中の一つの明日の朝」ということで、いつかはっきりしない朝ということになるのでしょうか。

いずれにせよ、「明日の朝」や「明朝」と明確に言う場合には、「صباح الغد」を使う必要があります。
或いは「غدا صباحا」という表現も「明日の朝」や「明朝」になります。

الواضح

日本のアラビア語文法学者による「現代アラビア語文法」という文法書があり、そのアラビア語訳が
الواضح في قواعد العربية المعاصرة」となっていました。

形容詞の「واضح」が名詞になるのかなどと、アラビア語を母国語とする人に聞いてみたところ、「宗教学、イスラム法学、語学関連の書籍や辞書、文法書などタイトルに「واضح」が使われることがある。一昔前の用法で古めかしい表現であるが、立派で権威ある書物との印象を与えるであろう」とのことでした。また、同様に使われる他の単語も教えてくれました。

「الواضح」は「明らかである」という意味の語ですから、「明解」と訳すれば、この文法書は「明解現代アラビア語文法」という感じでしょうか。

同様に、「المبين」(Ⅳ形能動分詞)という語も解説書や辞書のタイトルで使われるようで、同じく「明解」と訳せそうです。

また、「المختصر」も使われるようですが、こちらは簡約版とか簡略版の意味になります。辞書に簡約や簡略などというタイトル名を付けると、大雑把な辞書という印象を与えかねないので、日本では「ポケット版」と訳されていると思います。

حشمة

先日、某日本語-アラビア語辞典に「حشمة」という単語が載っていて、本中級辞書では未登録の単語であったので調べてみました。

その日本語-アラビア語辞典では、「身だしなみ」という意味で掲載されていましたが、様々な(電子、紙媒体)アラビア語-英語辞書やアラビア語-日本語辞書を調べたところ、いずれも、「恥じらい」、「内気、控えめ」、「礼儀正しさ、上品さ」などが意味として載っていました。

アラビア語を母国語とする人に確認したところ、この語は、「女性のきちんとした身だしなみ」や「女性の服装の上品さ、端正、清楚さ」を意味する語であるとのことで、男性には使われない語であるとのことでした。
また、「恥じらい」、「内気、控えめ」などの意味で使われることは、ほぼないとのことでした。

بلد , بلاد , بلدة

仕事で忙しい時期があり、また、夏期休暇で日本へ帰国していたこともあり、ブログが止まっていましたが、再開したいと思います。

先日、現中級辞書で、「بلد」という単語を男性名詞としても女性名詞としても扱いが可能であると登録していたのに疑問を持ち、調べてみた結果と、「بلاد」や「بلدة」についても触れておきたいと思います。

これら3語は複数形を含めて語形が重複してややこしいので、それも併せて確認しておきたいと思います。

بلد」は男性名詞で、複数形は「بلدان」と「بلاد」になります。
複数形を「أبلاد」とする説も見られますが、使われることはないと判断していいでしょう。
بلد」が女性名詞でも使われたのは、随分昔の話で、HANS WEHRの辞書の第3版では男女名詞の扱いとなっていたので、中級辞書もそれに倣っていました。しかしながら、現在では男性名詞扱いです。
従って、「مصر بلد جميل」(エジプトは美しい国だ)となり、形容詞は「جميلة」とはなりません。
発展途上国は、「بلد نام」となりますが、希に昔の名残か、
بلد نامية」などと書かれる例は少し残っているようです。

次に、「بلاد」は女性名詞で、複数形は「بلدان」になります。
بلد」も「بلاد」も意味は、共通して「国」です。アラビア語を母国語とする複数人に確認しましたが、両語を区別して使うことはないとのことで、同義語となります。敢えて違いを挙げると、「بلد」は国の一地域(一部)を意味することがあり、「بلاد」は国全体としての統一感を示す意味合いがあるとのことでした。

بلدة」は最後が「ة」で終わっているので女性名詞。複数形は「بلدات」と「بلاد」になります。意味は「町」(英語で言えば、town)になります。

これらの3語は、単数形と複数形に同じ形の語が入り交じっているので、「بلدان」と見て、その単数は「بلد」か「بلاد」のいずれになるのか、「بلاد」と見て、「بلد」の複数形なのか、単数形の「بلاد」か、「بلدة」の複数形なのかの判断が面倒になることがあります。

昔から「بلد」や「بلاد」の単語を見るともやもやしたものを感じていましたが、それはHANS WEHRの辞書等に多くの意味が載っていたからではないかと思います。
両語とも基本的な意味は「国」で、それ以外の意味が現代文で使われることは、ほぼないようです。

عرج

この動詞は、Ⅰ形であれば、「登る、上昇する」という意味があります。また、「足が不自由でびっこを引く」という言う意味もあるので、Ⅱ形には「~にびっこを引かせる」というⅠ形の使役の意味も可能ですが、Ⅱ形で一般的に使われる意味は、前置詞「على」を伴って「~へ寄る、立ち寄る、ちょっと訪ねる」という意味になるようです。

Ⅱ形では、「(歩いている道を)逸れる、曲がる」という意味などもありますが、第一義的には、「~へ寄る、立ち寄る、ちょっと訪ねる」という意味で使われるようです。

第一義的な意味が一般の辞書では出ていないようなので、念のためにお知らせしたいと思いました。

定冠詞+分詞

先日書いた
の補足となります。

その中で、
الانتخابات التي المزمع انعقادها في نوفمبر المقبل
という文章における誤りとして、「التي」という関係代名詞は不用であると書きました。

このことを文法的に説明できないかと思っていたところ、「アラビア語入門(池田修著)」(岩波書店)の関係代名詞の説明において、「定冠詞が能動分詞や受動分詞とともに用いられると、一種の関係代名詞としての役割を果たす」との記述があり、その例文として、
الرجل المذكور اسمه أدناه」(下に名前が述べられた男)
القرد المقطوع ذنبه(尾が切られた猿)
が挙げられていました。

アラビア語の定冠詞「ال」は、分詞と共に使われると、関係代名詞と同様に扱われる場合があると覚えておけばいいのではないかと思います。


لدى

ある方から、「لدى」について質問を頂きました。

様々なアラビア語の前置詞の中で、「لدى」は文語的で格式と高級感がある前置詞と見受けられます。

手元にある文法書では、「Modern Written Arabic」(Routledge)に詳細な説明がありました。

意味としては主に
1.~で、~の元で、~の手元で、~のそばで
2.~に-がある、~は-を持っている
3.(時間的)~の時に、~の時点で、~の際に、~の折りに
となります。

1.については、特定国で駐在する大使などを表現する場合の「駐在する」という意味で使われます。
سفير البحرين لدى اليابان」であれば「駐日バーレーン大使」という意味になります。
この場合、「لدى」の代わりに「في」を使っても同じ意味ですが、「لدى」を使う方が格式が高い印象があります。

英語で言えば、「Bahraini Ambassador to Japan」の「to」が「لدى」に該当することになります。
英語では「to」の後には国名を持ってくるのが一般的ですが、「لدى」の後は国名でも首都名でも構いません。
سفير البحرين لدى طوكيو」と書くことが出来、
سفير البحرين لدى اليابان」と同じく「駐日バーレーン大使」の意味ですが、日本語では「在京バーレーン大使」とも言えるでしょうか。

また、「Modern Written Arabic」は、2.について、「لدى 具体的な物より、概念的・抽象的なもの」と結びつく場合が多いと記してあり、その例文として、
لديه الكثير من الهموم」(彼には多くの心配事がある)
لديه أسبابه」(彼にはいくつかの理由がある)
が挙げられていました。他方で、具体的な物の所有として、
لديه سيارة」(彼は車を持っている)
لدى اليمن ثلاثة مطارات رئيسية」(イエメンには3つの主要空港がある)
という表現も可能になります。