صدر

名詞で、「胸」を意味する語ですが、アラビア語-英語(日本語)辞書の中には、その他の意味として、「心」、「始まり」、「冒頭」、「前方」、「奥」、「上座」、「首座」、「首席」、「要職」、「指導者」等々多くの訳語が見られます。

アラビア語を母国語とする人の協力を得て、「صدر」の訳として相応しいのはどうなるのかについて、まとめ直しました。

【名】
1.胸、胸部、胸元
2.心、胸の内、胸中、胸懐
3.詩の最初の半行、半行の前半部
4.[まれ]始まり、開始、冒頭
5.[まれ]早い時期、早期、初期、草創期、黎明期、萌芽期
6.[まれ]前、前方、先、奥、奥の方
7.[まれ]上席、上座、首席、首座
8.[まれ]指導者

2.は、「واسع الصدر」(心が広い)や「ضيق الصدر」(心が狭い、怒りっぽい)のような表現でよく使われます。
3.は専門語で一般的に見かけることはないですが、使われます。
4.と5.は、「イスラムの惣明期」などの意味で専門書などでは見られますが、一般的に、4.や5.の意味で使われることは希なようです。

رهانات

「賭け」という意味の「رهان」の複数形が「رهانات」であると記載する紙媒体の辞書或いは電子辞書をこれまでに見たことがないような気がします。

رهان」の複数形は「رهانات」であると中級辞書で登録済みですが、アラビア語を母国語とする人からこれで正しいことを最近確認しましたので、念のためにお知らせしておきます。

中級辞書Ver.6.38のアップロード

-アラビア語-日本語電子辞書データ更新報告-

辞書名:中級辞書Ver.6.38

登録語彙数:63,800

辞書の説明:(Ver.6.36から)新規に200語の追加、約40語の既登録語の訂正の実施。

特記事項:
更新が遅くなりました。

パスワードを既に入手されている方は、パスワード内の西暦を本年の西暦に変更して解凍して下さい。

إغلاق تعجيزي

تعجيزي」は、「達成不可能な」、「無理な」という意味で、「شرط تعجيزي」という表現は、「達成不可能な条件」、「無理な条件」、「ひどい条件」と訳されますが、
先日、「إغلاق تعجيزي」という表現を見て、どう訳すべきか分かりませんでした。

調べてみると、決まり文句となっているようで、英語で言えば「lockout」、すなわち、(労働争議で使用者が労働者の争議行為に対抗して工場などを一時閉鎖し労働者の就業を認めない)「工場閉鎖」という意味であるとのことでした。

謹賀新年(2023年)

新年明けましておめでとうございます。

昨年10月中旬頃から本業が忙しく、辞書の更新作業に遅れが出ました。
また、ブログで取り上げたい話題もあったのですが、先延ばしになってしまいました。

本年も微力ながら辞書の更新を続けていきますので、宜しくお願い致します。

حرا

某アラビア語-日本語単語・語彙集に、「حرا」というⅠ形の動詞が載っており、今までに見たことがない動詞だったので、アラビア語を母国語とする人に確認しましたが、初めて見た動詞だとの回答でした。

頻出度合いが高いものから順にまとめているはずの単語・語彙集の中で、この語が取り上げられている理由が分かりません。

念のためGoogleアラビア語で検索してもほぼ出てこないので、一般的な語ではないように思われます。

本中級辞書での扱いをどうするべきか迷いましたが、収録の上、一般的には使われない「まれ」を付しておくことにしました。

なお、その動詞の形容詞である「حري」はよく使われます。


中級辞書Ver.6.36のアップロード

-アラビア語-日本語電子辞書データ更新報告-

辞書名:中級辞書Ver.6.36

登録語彙数:63,600

辞書の説明:(Ver.6.34から)新規に200語の追加、約50語の既登録語の訂正の実施。

特記事項:
特になし。

إملاءات

アメリカがサウジアラビアに対して原油の増産を要求してきたのに対し、OPECプラスは5日の閣僚級会合で日量200万バーレルの大幅減産を決定し、それに対しアメリカはサウジが減産を主導したとしてサウジとの関係を見直すなどという報道がある中、GCC諸国はサウジの立場の支持を表明するとの報道が出ています。

こういう報道の中で、「رفضت السعودية الإملاءات الأمريكية」という表現が何度となく出てきますが、この「إملاءات」(単数形は 「إملاء」)については、既存のアラビア語-日本語辞書で訳語が出てきていないように思われました。

この語の意味するところは、日本語では「指図」がぴったりするように思います。更に言えば、(上から目線の)指示とか(一方的な、理不尽な)命令などと訳してもいいように思われます。

このアメリカの増産要請をサウジやサウジを支援する中東諸国側は、アメリカの中間選挙等を踏まえた身勝手な「指図」と捉えているようです。

حرد

この動詞(形容詞は「حردان」)の訳として「不機嫌になる、ふくれる、すねる、ふてくされる」を登録していました。

最近、この動詞の意味をアラビア語を母国語とする人に照会する機会がありましたが、上記日本語訳とはやや異なる意味合いのようですので、それを踏まえ修正しておきたいと思います。

例えば「غضب」が一時的に「怒る」、「立腹する」という意味であるのに対し、「حرد」は、怒りや立腹の度合いが激しく長引き、怒りの対象人物と絶縁したり話もしないような状態が続くという意味のようです。

夫婦喧嘩で妻が夫に怒り心頭となり、日常生活で当面の間、夫とは口を利かないというようなお怒りの場合に使われるのが、「حرد」であるとのことです。

非限定対格のタンウィーンの位置(3)

ということで、この対格のタンウィーン問題は、アラブ世界では「子音の上にタンウィーンが付される方式」と「アリフの上にタンウィーンが付される方式」が混在しているという状況にあり、また、欧米式のアラビア語教授法は前者の方式を採っているというのが結論になります。

アラビア語を欧米式のアラビア語教授法で学んできたため、私は個人的にアリフの上にタンウィーンが付される方式」には違和感があるので、子音の上にタンウィーンが付される方式」に従っています。

また、もう一つの考察としては、Windows との関連というのも若干あるのではないかと思っています。

Windows でユニコードを利用した多言語混在環境が整ったのは、 2000年に発売されたWindows2000 からで、その後、Wimdows XP (2001年)、Windows Vista (2007年)、Windows 7 (2009年)と続きましたが、Windows 7 で初めて、それまでのアラビア語表記の不具合がかなり解決されました。

Windows 7 までは、例えば 「ل 」という文字に適切な母音符号が振れない、すなわち、「ل」の文字の上にカスラやタンウィーンを振れない状況が続き、母音符号を振る必要がある際には、符号の位置をずらす等して表記せざるを得ませんでした。


従って、今回取り上げた「子音の上にタンウィーンを付す」ということが出来ず、「アリフの上にタンウィーンを付さざるを得ない」状況がありました。このために、アラブ世界で、「アリフの上にタンウィーンを付す」ということが広まった可能性はあるのではないかと思います。

マイクロソフトの仕様により、アラビア語を使う際にしっくり来ない例は色々とあります。

アラビア語の文章において「٢٠٢٢」と入力したいのに、デフォルトでは「2022」と表記されてしまう仕様が続いていたことや、特定の文字列を入力した際におかしな表記が現れる例など、Windows のアラビア語表記に関しては、未だ改善点が残っているようです。


少し脱線してしまったかもしれませんが、対格タンウィーンの位置問題は、この辺でお開きにしたいと思います。