アラビア語の定冠詞(2)

 アラビア語の定冠詞については、ずいぶん昔のことですが(なんと2001年)話題に出したことがあり、それ以来のようなので、第2回目ということにしておきます。「アラビア語の定冠詞(1)」はここを見て下さい。

 今回の話も基本的には、そのずいぶん前とほぼ同様の話ではありますが、英語の冠詞の用法との比較も含めておきたいと思います。

 一般的な事柄を述べる場合、それは「猿のおしりは赤い」とか「パンダは大人にも人気がある動物である」のような文章についてですが、英語の場合には、概ね以下のように言われています。
例えば、「キリンの首は長い」の訳として、
(1)Giraffs have long necks.
(2)A giraffe has a long neck.
(3)The girafffe has a long neck.
が考えられ、(1)が一般的な表現、(2)は(1)程ではないが一般的な表現、(3)は学術論文等で使われような硬い表現で、あまり一般的ではない表現。更に(3)は、もう一つの意味があり、一般的な事柄を述べるのではなく、「そのキリンの首は長い」という意味もあり得る。

 さて、これをアラビア語で考えてみましょう。
 「子供はミルクが好きだ」という一般的な事柄を述べる場合の訳としてアラビア語で表現できるのは、「يحب الأطفال الحليب」しかありません(勿論、名詞文にすることは可)。
 定冠詞と不定冠詞がある英語とは違い、アラビア語の場合には定冠詞しかないので、冠詞に関して言えば、アラビア語の方が扱いが簡単と言えるかもしれません。
 「يحب الأطفال الحليب」には、「子供はミルクが好きだ」という意味の他に、「その子供達はミルクが好きだ」の意味や「その子供達はそのミルクが好きだ」という意味もあります。それらは、文脈から判断するしかありません。

 なお、アラビア語で一般の事象を表現する際に、主語が人間や動物の際には、それらを複数形にするのが普通です。ところが物の場合には単数形でも複数形でもどちらでもいいようですが、単数形の場合が多いようです。そのことは「アラビア語の定冠詞(1)」のコンピューターの例で触れておきましたが、他の例でもう少し説明しますと、例えば車やテレビの説明書(マニュアル)で、主語の車やテレビの「ギアを変える」とか「スイッチを押す」などと説明する場合、車やテレビを複数形にする必要はなく、(定冠詞付きの)単数形で事足りるということです。