2012年3月アーカイブ

アラビア語の定冠詞(11)

 「アラビア語の定冠詞(9)」の補足説明になります。

 外国語の名称については、「اليايانية」(日本語)、「اللغة اليابانية」(日本語)のように、定冠詞が付くと説明しましたが、
يتكلم عدة لغات أجنبية 」(彼は数カ国語を話す)とか、
أحكم لغة أجنبية صعبة 」(彼はある難解な外国語をマスターした)のように、特定の言語を示さない場合には、非限定で表現することはあり得ますので、誤解のないよう、念のためお知らせします。

アラビア語の定冠詞(10)

 「Simple Arabic」(Saqi Books)では、冠詞の用法について他にも言及があり、「life(生活)」関連の表現で、「حياة」には定冠詞が付く」と説明され、「الحياة حلوة」(生活は楽しい)、「السعادة في الحياة」(生活における幸福)、「الحياة العامة」(一般生活)の用例が示されています。

 これについては、「حياة」が定冠詞なしで使われる場合として、
حياة ما بعد الموت」(死後の世界)というような表現はあり得ますし、
عاش حياة سعيدة」(楽しく過ごす)というような場合でも、定冠詞は付かないので、「حياة」とういう語が常に定冠詞付きになるという規則を設けることは適切でないように思われます。

アラビア語の定冠詞(9)

 「Simple Arabic」(Saqi Books)では、冠詞の用法について、「言語や学問教科を示す単語には定冠詞が付く」と説明しており、その例文として、「يدرس العربية والتاريخ 」(彼はアラビア語と歴史を勉強している)が示されています。 

 これについては、まさにその通りで、「日本語」(اليابانية)、「数学」(الرياضيات)、「物理学」(الفيزياء)等々、定冠詞をつけて限定になります。
  
 また、日本史であれば、「تاريخ اليابان 」とイダーファにして限定になりますし、「~学」という場合に「علم」を付けて表現する場合には、「生物学」であれば「علم الأحياء」とイダーファで限定になりますので、「言語や学問教科を示す単語には定冠詞が付き、また、言語や学問教科を示す表現は限定扱いになる」ということかと思います。

アラビア語の定冠詞(8)

 「Simple Arabic」(Saqi Books)という初心者向けの英語で書かれたアラビア語の文法書に、定冠詞の用法についての説明が出てきます。その中に、「不可算で複数形を持たない物質名詞には定冠詞が付く」として、そのような物質名詞として、「حديد」、「ذهب」、「حليب」等の単語が挙げられており、例文として、「الذهب أغلى من النحاس 」(金は銅より高価である)が示されています。

 しかしながら、上記例文では、定冠詞がないと一般的には文章にならないから定冠詞が付く訳で、物質名詞だからという理由ではないように思います。更には、「يوجد ذهب رخيص في السوق 」のような物質名詞を非限定にしてもいい文章も考えられますので、「不可算で複数形を持たない物質名詞には定冠詞が付く」という規則には難があります。

 なお、HANS WEHR等の辞書では、「حديد」の複数形を「حدائد」としているようですが、ネットで調べる限り「حديد」には複数形はなく、「حديدة」の複数形が「حدائد」とする説が多いように思われます。そして「حديدة」は、「鉄の破片」、「鉄片」の意味の他に、鉄から離れて「(身につける)金属の装飾品」の意味として使われることもあるようです。

アラビア語の定冠詞(7)

 定冠詞の話はしばらく続くことになりそうです。

 「Elementary Modern Standard Arabic」(Cambridge University Press)(いわゆるオレンジ本と呼ばれる元々ミシガン大学が作成したアラビア語学習書)の第一巻で、定冠詞が付く場合の説明の一つに「actions and states」というのがあり、その例文として以下が記されています。
 「بعد الحصول على شهادة 」(単位の取得後)
 「في الدراسة هنا 」(ここで勉強中に)
 「بعد الانتهاء من الدراسة 」(勉強を終えた後に)

 以上の通り、「行為・状態を示す名詞・動名詞には定冠詞が付く」というのが一つの規則になります。
 上記のような例文においては、行為の主体が示されることが多く、それにより名詞や動名詞は限定扱いになります。
 「بعد حصول أخي على شهادة 」(私の兄が単位を取得した後に)
 「في دراسته هنا 」(彼がここで勉強中に)
 「بعد انتهائي من الدراسة 」(私が勉強を終えた後に)

中級辞書Ver.4.10のアップロード

- アラビア語-日本語電子辞書データ更新報告 -
辞書名:中級辞書Ver.4.10
辞書の説明:(Ver.4.08から)新規に200語の追加、約50語の既存入力語の訂正の実施。
特記事項:本辞書更新に合わせ「日本語-アラビア語辞書」も更新しました。

交渉決裂

 「交渉が決裂する」と言うような場合の「決裂」が本「アラビア語-日本語電子辞書」で日本語から逆引きしてもヒットしない、すなわち入力されていないことが分かったので、入れておきました。

 HANS WEHR等一部の辞書に、「交渉決裂」という意味に匹敵する表現として「قطع المفاوضات 」が記されていますが、これは「交渉の中断」という意味だと思います。中断なので、また暫くすると交渉が始まることになります。

 また、「توقفت المفاوضات 」という文章もある辞書に記されていますが、これは一時的に中断するとか暗礁に乗り上げるという意味で、交渉のテーブルに戻ることが(永遠に或いは当面は)ない「決裂」とは意味が違います。

 「決裂する」にぴったり来る動詞を探していたのですが、「انهار 」が今のところ第一候補です。「交渉が決裂」するという表現として、
انهارت المفاوضات 」と
وصلت المفاوضات إلى فشل ذريع 」の2つを登録しておきました。

خرير

 この単語の訳が間違って入力されていることに気付いたので、訂正しておきました。「せせらぎ」という訳がぴったりくるようです。

 こういう音はアラブ人も心地よいと感じるのでしょうか。
 YouTubeで「خربر الماء」で検索すると、その水の音を聞くことが出来ます。

アラビア語の定冠詞(6)

 今住んでいるジッダは、かつてはサウジアラビアの首都であり、聖地マッカやマディーナへ巡礼に赴く前にまず到着する地であることからも、サウジアラビアの中で最も国際色豊かでリベラルかつスモポリタンな都市と言われています。
 コスモポリタンと言われるとおり、ジッダには中東、中央アジア、アフリカ等からの移民が多いのですが、移住者の氏名の最後に家名が書かれているので、それを見ればその人がどこの出身かが分かります。例えば、「شنبتري」であればトルコ・エジプト系、「ميمني」であればパキスタン系といった具合です。

 さて、この家名がアラビア語の定冠詞と関係してきます。
 「アラビア語の定冠詞(5)」で、定冠詞の役割に「強調」があると書きましたが、移住者の若い世代は、この家名に定冠詞を付ける傾向があるそうです。それは、サウジの諸部族の中に埋もれてしまわないよう家名を「強調」するためであり、それには、「プライドと連帯」意識も含まれるであろうとのことです。