2012年4月アーカイブ

アラビア語の縮小名詞(2)

 アラビア語の縮小名詞の続きになりますので、前回を第一回にして今回を第二回にします。

 最新辞書バージョンである「中級辞書Ver.4.14」をPDICの検索機能「全文検索」の訳語から「[縮]」で検索すると縮小形の収録語の一覧が表示されます。
 収録されている縮小形は、所持する文法書に記載されている縮小形を取り込んだものが大半ですが、これらの縮小形がどの程度一般的に使われているのかについて、アラビア語を母国語とする人に検証してもらいました。

 その結果は、予想通りでしたが、本辞書で収録してある名詞縮小形はほとんど使われることはないようです。
 大別すると、
(1)「بحيرة」のように縮小形があまり意識されることなく普通名詞として使われている語
その他の例としては、「كويت」(定冠詞を付けてクウェート)、「حسين」(フセイン)などの多くの人名
(2)「كتيب」のように縮小形が意識され、使用されることがある語:
その他の例としては、「كليب」(子犬)、「كويكب」(小惑星)、「لحيظة」(ほんの一瞬)、「وريقة」(小葉)など
(3)使用されない、或いは使用されることが極めて少ない語(その縮小形を見た際に、それが縮小形であると理解出来る場合が多いが、見当が付かない場合もある)

 「مفيتيح」(小さな鍵)については、「مفتاح صغير」と言えばいいし、「بعيد」(少し前)などは母音符号を振らないと普通は「遠い」という意味に取るので、紛らわしいなどの順当なコメントがありました。
 また、最近縮小形を見た例としては、「سويعات」(これは、ساعة (時間) の縮小名詞の複数形で「心地よく短い時間」の意味がある)を思い出したとか、かつて学生にちょっとしたレポートの提出を求める際に、「بحيث」という縮小形を使ったが、生徒は即座に理解できなかったので、「بحث が50ページ書かないといけないレポートであれば、بحيث は5ページで位で十分なレポートのこと」と説明したと言うような話もありました。
 また、例えば作家や詩人であれば、微妙な表現を示すことが出来る縮小形を多用するであろうから、文学的な職業人にとって縮小形はより馴染み深いであろうとのことでした。

 ということで、アラビア語の文法説明で引き合いには出されるが、一般的に使われることのない(極めて少ない)縮小形については、次の辞書バージョンでは[まれ]記号を付しておきたいと思います。

 なお、 「كويت」(定冠詞を付けてクウェート) は、「كوت」(砦)が原型であるとはよく言われるものの、 「كوت」 が収録されている辞書は見たことがありません。この辺の話については、「アラビア語の縮小名詞(3)」で触れてみたいと思います。


中級辞書Ver.4.14のアップロード

- アラビア語-日本語電子辞書データ更新報告 -
辞書名:中級辞書Ver.4.14
辞書の説明:(Ver.4.12から)新規に200語の追加、約50語の既存入力語の訂正の実施。
特記事項:特になし。ラビア

アラビア語の縮小名詞(1)

 アラビア語の縮小名詞については、「كلب 」(犬)が「كليب 」(子犬)になるような例は知っていましたが、「アラビア語入門」(池田修著、岩波書店)の「縮小名詞」の説明箇所を読んでいたら、縮小名詞は「小さい状態」の他にも「愛情」、「軽蔑」、「強意」を示すためにも用いられるとして、以下の例示がありました。
(1)愛情 ابن の縮小名詞=بني (愛する息子)
(2)軽蔑 رجل の縮小名詞=رجيل (小男)
(3)強意 خير の縮小名詞=خيير (大変良い)

 Google Arabic でخيير を検索してもヒットすることはなかったので、خير の縮小形が一般的に使われるとは思えませんが、縮小名詞を見た際に、その意味は「小さくて、かわいらしい」だけではないということを頭の片隅に置いておくと、意味を取り違えないで済む等役に立つことがあるかもしれません。

中級辞書Ver.4.12のアップロード

- アラビア語-日本語電子辞書データ更新報告 -
辞書名:中級辞書Ver.4.12
辞書の説明:(Ver.4.10から)新規に200語の追加、約30語の既存入力語の訂正の実施。
特記事項:特になし。