非限定対格のタンウィーンの位置(3)

ということで、この対格のタンウィーン問題は、アラブ世界では「子音の上にタンウィーンが付される方式」と「アリフの上にタンウィーンが付される方式」が混在しているという状況にあり、また、欧米式のアラビア語教授法は前者の方式を採っているというのが結論になります。

アラビア語を欧米式のアラビア語教授法で学んできたため、私は個人的にアリフの上にタンウィーンが付される方式」には違和感があるので、子音の上にタンウィーンが付される方式」に従っています。

また、もう一つの考察としては、Windows との関連というのも若干あるのではないかと思っています。

Windows でユニコードを利用した多言語混在環境が整ったのは、 2000年に発売されたWindows2000 からで、その後、Wimdows XP (2001年)、Windows Vista (2007年)、Windows 7 (2009年)と続きましたが、Windows 7 で初めて、それまでのアラビア語表記の不具合がかなり解決されました。

Windows 7 までは、例えば 「ل 」という文字に適切な母音符号が振れない、すなわち、「ل」の文字の上にカスラやタンウィーンを振れない状況が続き、母音符号を振る必要がある際には、符号の位置をずらす等して表記せざるを得ませんでした。


従って、今回取り上げた「子音の上にタンウィーンを付す」ということが出来ず、「アリフの上にタンウィーンを付さざるを得ない」状況がありました。このために、アラブ世界で、「アリフの上にタンウィーンを付す」ということが広まった可能性はあるのではないかと思います。

マイクロソフトの仕様により、アラビア語を使う際にしっくり来ない例は色々とあります。

アラビア語の文章において「٢٠٢٢」と入力したいのに、デフォルトでは「2022」と表記されてしまう仕様が続いていたことや、特定の文字列を入力した際におかしな表記が現れる例など、Windows のアラビア語表記に関しては、未だ改善点が残っているようです。


少し脱線してしまったかもしれませんが、対格タンウィーンの位置問題は、この辺でお開きにしたいと思います。