اشتباك

この語は、その複数形の「اشتباكات」でもよく見かける単語で、「(武力)衝突」、「小競り合い」、「乱闘」などの意味があることはご存じのことと思います。

他方で、「HANS WEHR」等の辞書では、「巻き込まれること」とか「関わること」などの意味もあるように記されています。更には、「錯綜」、「複雑化」などの意味もあるように記されている辞書もあります。

さて、ある政治雑誌にアラブの春関連の論文集があり、そのタイトルが「الاشتباك الخليجي」となっていました。また、その英訳が、「Gulf engagement」となっていて、「アラブの春への湾岸諸国の関与」のように意味を取ってしまいがちですが、どうもそうではないようです。

アラビア語を母国語とする人による結論は、「اشتباك」は、「(武力)衝突」、「小競り合い」、「乱闘」という意味のみで、「関与」や「錯綜」などの意味はないとのことでした。

その論文集は、湾岸諸国によるアラブの春への対応の混乱振りやサウジとカタールによるアラブの春への対応の違いを扱っているので、「الاشتباك الخليجي」は、(アラブの春に対する)湾岸諸国の「不和」とか「(意見の)食い違い」という意味で、結局は「اشتباك」の基本的な意味と同じであるということかと思います。

なお、余談ですが、英語の「engagement」には「戦闘」という意味があり、「Gulf engagement」とは、「(アラブの春を巡って)湾岸諸国でもめている」ということを意味しているのであれば、名訳かもしれません。