サウジアラビアへ運んだグランドピアノ(3)

 楽器はその所持者が調律をするのが普通で、ピアノだけが例外だと言われます。ピアノは一般的には調律師に調律をしてもらう必要がありますが、サウジアラビアにいては、自分でやらざるを得ないと納得してしまう方が、事がスムーズに運ぶと思いました。
 しかしながら、ここジッダの学校、大学、催し会場等にピアノは置いてあるはずで、そうであれば相当数のピアノがあることになり、調律師も一人くらいはいるのではないかと思います。調律師を探して、きちんとした調律をしてもらうということが次の課題になります。

 自分でとりあえずの調律をやるとなると、まずは情報収集です。
 ピアノの調律については、ネット上でピアノ店や個人の調律師の方により多くの情報提供がなされていますので、これらのサイトが参考になります。
 次に、調律道具が必要になります。幸い、子供の補講のために妻と子供が夏に日本へ戻っていたので、持ち帰ってもらうことにしました。調律道具は調律の専門店で扱っていますが、アマゾンでも取り扱っていたので、ここからネット購入しました(amazon.co.jp で、「ピアノチューニングキット」で検索)。入手したキットの内容物は、チューニングハンマー、木製ウェッジ、ゴムウェッジ、ミュートフェルト、チューナー(KORG製)になります。表示

 さて、実際の調律についてです。
 勿論、これまでに調律の経験はありませんので、参考になるサイトを見ながらやってみました。例えばこのようなサイトです。
 http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/4707/kai01.html

 しかしながら、どうもよく分からないことがあります。調律の基本は中央部の鍵盤から始めるらしく、中央部の鍵盤の弦は3本あり、ミュートフェルトで3本の弦の両端の弦を止音して、真ん中の弦から調律していくと説明されているのですが、ミュートフェルトで両端の弦の音を止め、真ん中の弦の音だけを鳴らすということがどうもうまく出来ません。真ん中の弦の音がこもってしまい音がよく聞き取れません。フェルトの入れ込み方が悪いのでしょうか?

 仕方がないので、両端の弦の音を止める調律という方法は止めにして、まずは、一つの鍵盤に張られている3本の弦のうち中央弦のピンをチューニングハンマーでうなりが少なくなるポイントを探してそこで止めるという調整を行い、その後残りの2本の弦を同様の方法で調整するという繰り返しを中央部の鍵盤全部に行いました。しかしながらこの方法は素人考えの論外な調整方法であり、実際上調整には多大の難があることが分かり、結局はフェルトの代わりにゴムウェッジを利用してユニゾンの作業を進めました。
 チューナーで中央「ラ」音を442Hzに合わせて調律を進めましたが、チューナーの針の振れを見ながらの調整が心許ないことがあり、その際には、ピアノの消音機能を利用して電子音を出し、本物の音と比較しました。正確なヘルツ数の音を出す電子音と比べながら作業できるのは大変助かったということになります。 表示
 
 このユニゾンの作業一つにしても、初心者には相当時間がかかります。初日に中央部の調律を終わらせ、次週に中央部と低音部、3週目に中央部と高音部(この状態で中央部の音は安定してきた感じがある)、4週目に低音部と高音部ということで、1ヶ月が過ぎました。その後は、様々な曲を弾きながら、オクターブや和音がなんとなくおかしいと感じる度に、微調整を繰り返しました。
 
 当初の狂いの状態からは、かなり良くなったとは思いますが、所詮は調律の知識と経験がない者が行ったこと、それも単にチューニングハンマーをチューニングピンに差し込んで、弦を張ったりゆるめたりするよう右へ左へ回しただけなので、調律の序の口に触れた程度のことだと思います。よって、プロの調律師の方からすれば、きっと話にならない調律だと思います。確かに、調律直後はいい音を保てても、2週間程度経つとどこか狂っているような感じがあり、ピンを微調整せざるを得ません。こんなに頻繁に微調整をしないといけないのは、根本的に調律方法に問題があるのだとに思います。
 調律師を探して、早急に全般的な調整をしてもらいたいという思いに変わりはありません。

 なお、余談ですが、 「サウジアラビアへ運んだグランドピアノ(2)」で触れた超音波式の加湿器ですが、ネットで検索すると色々欠点が指摘されています。その指摘は正しく、家中の家具が白っぽくなる(吹き出された水中のミネラル成分が白い粉となって現れる)現象が起きました。
 また、蒸気発生部をブラシで洗ったせいか、蒸気発生能力が低下し、加湿器はほとんど使いものにならなくなり、家具が白くなるのも嫌なので、使うのを止めました。湿度については、今のところ、ちょっと窓を開けたりして湿度を含む空気を室内に取り入れるようにしています。しかしながら、いくら努力しても、40%を上回ることは希で、この状態が長期間続くと響板等に影響が出るのではないかと心配は残ります。

 更には、この加湿器が「NIKAI」製で、「(有限会社)NIKAI, JAPAN」の連絡先が「神戸市灘区篠原本町...」と梱包箱に書かれていたので、てっきり日系企業の製品だと思って買ったのですが、どうもそうではないようです。表示
 http://forum.aramcoexpats.com/viewtopic.php?f=26&t=3792

 有限会社として登録してされている(であろう)神戸の住所を梱包箱に明記している以上、その部分は恐らく嘘ではないのでしょうが、これは、日本ブランドと見せかけるための便宜上の措置で、実態は日本と関係はないのかもしれません。
 http://www.nikai.com/ では、日本との関連性は読み取れませんが(神戸の本拠地にも触れられていない)、NIKAI傘下の会社として、「NIKURA JAPAN」が紹介されており、このサイトがこれになります。http://www.nikurajapan.com/ 
 いずれにせよ、NIKAIという会社の日本との関連性.....謎めいているように思います。