サウジアラビアへ運んだグランドピアノ(2)

 製造されたピアノがどこの国・地域で使用されるかによって違いはあると思いますが、日本製のピアノが日本で使用される場合、ピアノの管理環境としては、次のようなことが言われているようです。
・急激な温度・湿度の変化がなく、直射日光の当たらない場所

・温度20度・湿度55%前後が最適環境。
・温度15度から28度、湿度45%から70%の範囲での管理が快適な環境。

 日本ではマンションに住んでいたので、概ね上記の快適な環境下で管理が出来ていましたが、こちらサウジでは、まず、炎天下のジッダ港で1ヶ月近くピアノを含む船荷が放置され、その後、自宅へ運ばれたものの、温湿度計はこんな数値を示しており、かなり厳しい管理環境となっています。 表示

 ジッダは海岸沿いなのでサウジの中でも湿度は高い方ですが、夏場は閉めきって室内で冷房を入れるので、クーラーで除湿されてしまい、湿度は30%に達することはありません、こんなに低いとは驚きでした。きっと人間の肌にも悪いのだと思います。これではいけないと早速加湿器を買いました。冬場の暖房機により室内の空気が異常に乾燥するシカゴにいる時に使っていたのと同じ超音波式の製品です。 表示

 加湿器をフルで動かしても、冷房を入れると極端に湿度が下がってしまいます。今は暑いので冷房を頻繁に入れざるを得なく、温度と湿度のバランスを取るのが難しいところです。冷房を全く入れず加湿器を稼働させる状況では、湿度は45%程度に上がります。結論的には、加湿器を稼働させた状況での湿度は30-45%位で、上記の快適な管理条件よりかなり低い値となってしまします。

 加湿器の購入で、少しでも湿度を標準に近づけようとした甲斐もなく、徐々にピアノ(アコースティック)の音が狂い始めました。日本と大きく異なる条件が3ヶ月も続くと、さすがにこうなってしまうのでしょうか。ドレミファソラシドと鳴らすと古典音階のような感じになり、何か曲を弾くと、聞くに堪えない音を出すようになりました。

 ここまでくると、調律をしないといけないということになります。
 カワイについては、残念ながら、サウジに代理店はなく、中東では、イスラエル、イラン、ヨルダン、クウェート、オマーン、レバノン、UEAに代理店があります(http://www.kawai.co.jp/worldwide/world/index4.html)。
 ジッダではヤマハの各種ピアノ(グランド、アップライト、電子)は売られています。また、韓国製の三益(Samic)社のピアノもグランドピアノを含めて売られています。もし、ヤマハかサミック製を所持していれば、調律を代理店に依頼することは出来ますが、他社のピアノの調律は受け付けていないとのこと。また、ヤマハについては、調律師はジッダには常駐しておらず、ドバイから来てもらうしかないとの話を聞きました。
 製品を問わないピアノの調律師が一人位はここでもいるように思うのですが、いずれにせよ、今後温度・湿度の管理がままならないと、比較的短期間のうちに何度も調律をせざるを得なくなる可能性が高く、そういうことを考えると、自分自身が調律に挑戦するしか道はないのだろうと思い始めました。今回持参したカワイのピアノの利点は、消音装置で電子音を出せることであり、消音設定で基音のヘルツ変更も可能なきれいな音を出せるので、アコースティックの音が狂っても弾く分には問題ないのですが、せっかくアコースティックの音を多少なりとも出せる環境にあるので、生の音を調律したいという気になった訳です(続く)。