消音装置付きのピアノを買うと決めてからの機種選定は早かったように思います。
まず、ヤマハの消音装置付き(サイレント)ピアノです。
https://jp.yamaha.com/products/musical-instruments/keyboards/grandpianos/silent/?mode=series
ヤマハのサイレントピアノのコンセプトは、「普段はアコースティックピアノとして使い、音が気になる時間になったら、ヘッドフォンを使う」というもの。ヤマハのセールスの方からも、「昼間は本物の音を出して、夜にはヘッドフォンで練習するという使い方」と説明を受けたのですが、普通の家では、昼間であれ夜であれ、近所迷惑になるので本物の音はなかなか出せないというのが一般的な事情ではないかと思います。サイレント時にヘッドフォンからしか音を出せないとなると、(ヘッドフォンをしない)普通の状態では耳から聞ける音はないことになってしまいます。誰かが弾いているときにはその音を共有したいし、自分が弾くときにも誰かに聞いてもらいたいということが出来なくなります。それについては、ヤマハのセールスの方は「スピーカーを外付けしたらいい」と言われたのですが、別途スピーカーを置くというのは、楽器との一体感に欠けるし、ピアノから線を出してスピーカーにつなぐのは見栄えの点からも好きになれませんでした。
その点、カワイの消音機能付きピアノには、スピーカーを内蔵した機種があります。
https://www.kawai.co.jp/piano/grand/gp_vanish/
カワイのスピーカー付き消音ピアノは、響板にスピーカーを設ける方式で、スピーカーは下図のように設置されます。
(画像は、https://www.kawai.co.jp/piano/grand/gp_vanish/#anytime_2 より。クリックで拡大。)
ある楽器店の方から、「響板スピーカーについては賛否両論あって、消音時は素晴らしい効果を発揮するが、本物の音で弾く場合には、響板にスピーカーを取り付けているのだから、響板自体に何の影響もないという訳ではないだろう」と、また別の楽器店の方からは、「響板スピーカーはカワイの特許製品なので、ヤマハが響板スピーカーを実装することは当面出来ない」という話を聞きました。(前者の話に関しては、http://omotesando.blog.kawai.co.jp/e855.html を参照下さい。響板に直接ネジ等でスピーカーを取り付けることはないようです。)
また、両社の消音システムについては、以下のような技術的な比較が出来ます。
(1)センサー(ハンマー部)
ヤマハ:鍵盤読み取り方式非接触型光センサー(2点)
カワイ:ハンマー読み取り方式非接触型光センサー(3点)
(2)消音方式
ヤマハ:ハンマーシャンクストッパー方式
カワイ:ハンマーシャンクストッパー方式
(3)最大同時発音数
ヤマハ:64音(ステレオ時32音)
カワイ:192音(ステレオ時96音)
(4)音色数
ヤマハ:10音
カワイ:22音
(5)ピアノ音源
ヤマハ:コンサートグランドCFⅢS
カワイ:フルコンサートグランドEX
消音システムとしての一番の違いは、鍵盤読み取り式かハンマー読み取り方式かということですが、それぞれの方式による鍵盤タッチの違いについては、ヤマハとカワイの両方の消音ピアノが置いてある楽器店を訪ねることができなかったので、なんとも言いようがありません。いずれのタッチもアコースティックのタッチとは変わらないように思えました。また、ヤマハのピアノの鍵盤タッチの方がやや軽いようにも思えましたが、これは機種による違いというよりも個体差の違いなのかもしれませんので、あまり参考になる話ではないです。
鍵盤タッチについてのヤマハの説明が「消音時のタッチ感はアコースティック演奏時とほとんど同じ」となっているのに対して、カワイは「消音時でも通常時に近いタッチ感を実現した」となっており、更に、「技術開発戦略室 ANYTIME X開発チーム」から「カワイの基本的な消音機構は、ANYTIME Xアップライトピアノがベースになっているが、新設計のセンサー機構や、止音機構の剛性向上、ハンマーシャンクが直接当たるクッション部分見直しといった改善の積み重ねにより、消音時/通常時のタッチ感の差を非常に小さくすることに成功した」と説明されています。鍵盤タッチを重視している自分としては、響板スピーカーで音を出せる点や最大同時発音数の多さから、消音システム全般に関してはカワイの方が技術的にやや優位にあるのではないかと考えた次第です。
こういう訳で、カワイの消音装置付きの廉価板であるGE-30GATX-fを購入することにしました。
購入記最終回は、GE-30GATX-fの使用感の報告として終わりにしたいと思います(続く)。
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