非限定対格の際に付される母音符号タンウィーンの位置については2通りの書き方があって、例示すれば次のようになります。
子音の上にタンウィーンが付される方式。
بيتًا
أيضًا
アリフの上にタンウィーンが付される方式。
ًبيتا
أَيْضاً
この件については以前から大変気になっていたので、一度きちんと調べたいと思っていました。
調べ出すと、まず、こういう記述がありました。
「対格のタンウィーンでは学派によって表記が分かれており、アリフ前の子音のファトハターンを書く كتابًا と、アリフ真上にファトハターンを書く كتاباً とに分かれる」(注:ファトハターン=タンウィーン)
そこで、学派のことも含め、アラビア語を母国語とする人に見解を求めたところ、その結果は次のとおりでした。
・その学派とは、アラビア語文法学派の主流と言われるバスラ学派とかクーファ学派なのか、或いは他の学派なのかはよく分からない。
・現代アラビア語では、子音の上にタンウィーンを付すケースとアリフの上にタンウィーンを付すケースのいずれも見られる。
・東アラブ地域では、子音の上にタンウィーンを付すのが一般的となっている。サウジアラビアなどで発行されるコーランはこの方式を踏襲。但し、東アラブ地域の中のシャーム地方(シリア、レバノン、ヨルダン等)ではアリフの上にタンウィーンを付す方式を採用している。
・西アラブ地域では、アリフの上にタンウィーンを付すのが一般的。モロッコなどで発行されるコーランはこの方式を踏襲している。
アラブ人向けアラビア語文法書や解説書をネットで見たところでは、子音の上にタンウィーンを付すケースが多いという印象がありました。
また、アラビア語を母国語とする数人に尋ねてみたところ、いずれの方式も見られるし、また、タンウィーンなどの母音符号を振ることはまずないのでどちらの方式でもいいと思うが、子音の上にタンウィーンを付す方がしっくりくるというのが回答でした。
東アラブ地域にいる人に尋ねている訳ですから、子音の上にタンウィーンを付す方がしっくりくるという回答は、そういうところではないかと思われます。(続く)